春日井ボンのボンかすLIFE

春日井ボンのボンかすALONE

日本人バヤニストの生活と日々

サーシャ

朝に連れを送ってから、日中ずっと演奏動画を撮影した。

 

前と同じだけど、撮影すると本当にいろんなことを学ぶんだよなぁ。撮り始めの数テイクは本当に信じられないところで失敗する。指がつる。普段の練習では9割以上失敗しないわけだが、残りの1割が色んなパートで出てくる。だから1時間やってもまったくOKテイクが生まれない。

 

これはライブじゃない。なんぼでも失敗したっていいのに、なぜ硬くなって失敗するのだろう。演奏力というのは、難しいフレーズを練習で9割間違えないことでは勿論なく、10割の成功を生み出した精神と身体の動きを再現する技能なのだ。

 

一度だけ何かが乗り移ったかのように身体がというか指が勝手に動いた時があった。完璧というよりも、なんとも情熱的な演奏で自分でもびっくりしてた。こりゃぁきっと古のロシア人天才バヤン弾きが時空を超えて憑依したんだろう…という妄想を思いついたまま演奏して、自分が空恐ろしくなった頃に突如として憑依が解けた。最後の最後、あとちょっとというところでリカバリ不能なほどの演奏ミスをして止まったのだ。どうやら、ある程度の時間ずっと弾き続けないと乗り移ってくれないらしい。あれは不思議な体験だった。その時だけ曇天の中、和室に光が差した。「ヒカルの碁」かよ。佐為にちなんでサーシャとでも呼んでおこう。

 

結局、これも完璧ではないがひとまず終えられたテイクをOKテイクとして今日の撮影を完了した。動画を確認すると、テンポもそうだけど波の乗り方というか、どこで押してどこで引くかなどのヒントになる。そう、撮影する意味は見てもらうためだけじゃない。一番ためになるのは自分だ。だからきっと今日の一日も生きた証として貴重に思える。サーシャは今度いつ来るだろう。