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バヤニストの独り言

新曲「Curoscivo」について

昨日アップした新曲「Curoscivo」について、書いてみよう。

 

最初はたまたまだった。中華風で海を感じる8小節のメロディーを思いついた。それが、マルコ・ポーロのイメージと結びついた時に曲のイメージが明確に見えてきた。船の舳先に立ってまだ見ぬジパングを目指す若きマルコ・ポーロ。その頃まだ曲は完成しておらず、イメージを広げるためにとりあえずマルコ・ポーロについて調べだした。知ってるつもりで知らないことがたくさんあった。実在しなかった説もあるようだが、そこはどうでもいいと思ってる。

 

マルコ・ポーロは13世紀に実在したであろうと言われているベネツィア生まれのイタリア人商人で、ご存知のように帰国後に作家に語った話がかの有名な『東方見聞録』だ。そういうところはWikipedia を見てくれればよい。マルコ・ポーロと言えば旅人のイメージが強いが、元の皇帝フビライ・ハーンに仕えた彼はベネツィアを離れた24年間のうち17年間は元に滞在して、多くの言葉に堪能であり、長く地方官吏を務めていた。しかし元に入ったのは陸路であって、船に乗ったのは南シナ海とインド洋を経て帰国の途についた時だけらしい。そんな情報を仕入れてみても、史実というか伝えられている話とは異なるけど僕にはマルコ・ポーロが船に乗っている姿が頭を離れなかった。

 

さて作曲の方はAメロ、Bメロができたがこの曲はAがサビという曲なのでCメロがサビではなくトリオになる。曲の中間部だ。これもたまたま、なぜか琉球音階(レとラを抜いた音階)の展開が生まれると、やがて架空のストーリーが僕の頭の中を支配した。実際にはジパングに至ることはなかったが、もしもマルコ・ポーロジパングに辿り着いたら…というイメージだ。そう、ジパングに着く前に琉球に寄るでしょうよ、と。

 

たまたま、曲の始まりである中華風のメロディーを最初に作った時からマンドリン音色を使っていた。V-Accordionマンドリン音色の特徴はトレモロになっていることだ。マンドリンはギターと同じように撥弦楽器であるから音を鳴らした瞬間に減衰するが、トレモロ奏法がマンドリンの特色となっていて、V-Accordionではそれを再現している。つまり速いパッセージでは単音で、ロングトーンではトレモロになり、減衰しない。これがロングトーンの多い主旋律に独特の緊張感を与えてくれた。まるで途切れない洋上の波のように。偶然が必然になる瞬間は、マンドリンがイタリアの楽器であることに気付いたこと。これはきっと名曲になるのだと確信に変わった。

 

しかし2019年の日本でマルコ・ポーロについてこれだけ想像した人間は僕以外いないんじゃないだろうか?彼を題材にした作品は洋の東西を越えて数多ある。たしかにいにしえの旅人というテーマにはロマンがあるが、結局、僕は世界とか外国とか他の文化に触れるということが好きで、それが自分の曲によって掘り起こされたのだ。だから作曲の過程は旅をしているような気分になった。恐らく、はるか昔から現代まで、作曲家が他の文化圏をイメージした曲を作る時の精神を僕は体験したに違いない。

 

曲が最初の完成を迎えてからタイトルを考えたが、楽曲が今までにない出来上がりだったので、とにかく絶対に妥協だけはすまいと思った。合計40個くらい考案したかな。造語も作ったがなかなか曲に馴染まない。日本語、中国語、イタリア語、英語を翻訳して本当にいろんなタイトル考えたな。13世紀当時のことを調べようとして、羅針盤の原型である指南魚とか指南亀(木で彫った魚や亀に磁石を組み込んで水に浮かべたり針の上に置き、方角を測る器具)に魅かれたりもした。だけどそうした事物は時代の小道具ではあっても舞台を象徴してはいない。舞台そのものを示すスケールの壮大なタイトルが欲しかった。が、そんな言葉が作品名として使われていない訳がない。語呂のいい2 wordsだと世界の誰もが曲名やソフトウェアの名称に使っている。

 

だから本当に偶然だった。待てよ、マルコ・ポーロが今の香港のあたりから台湾の東を琉球に向かって船で渡るとしたら、黒潮にのってくるだろう。黒潮!他の言葉ではなんていうのかな?と調べてみたら多くの言語でKuroshioというのだ、Tsunamiみたいに。

 

ちょっと妄想してみた。日本の漁師が遭難して杭州あたりに保護されていて、その助けを借りて共にマルコ・ポーロは北上するのだけど、漁師のオヤジに「これは黒潮ってんだぞ」と言われてイタリア語風に「クロッシオ?」とか聞き返すシーン。それで調べてみたらイタリア語でも黒潮はKuroshioと言うのだけど、イタリア語化した日本語由来の外来語としてCuroscivo(クロッシヴォ?)という表現があるのだと。たぶんイタリアで海洋学やってる人しか使わないイタリア語なんじゃないか?Googleで検索するとたった200件弱しかなかった。そして動画で検索した時に0件だと分かった時に僕はあーっと声をあげた。長い旅が終わった瞬間だった。

 

今、この単語で検索できる動画は僕の曲ひとつしかない、この広い世界で。僕はたどり着いた。「Curoscivo」は僕にとってのZipanguになった。

 


Bon Kasugai - Curoscivo (original) V-Accordion FR-1xb Solo