春日井ボンのボンかすLIFE

春日井ボンのボンかすALONE

日本人バヤニストの生活と日々

僕はピアノが弾けない

僕はロシアのとある街に一年間、留学した。1992年、ソ連が崩壊してロシア共和国となってから最初の春に僕はロシアに下り立った。ジャーナリスト志望だった僕はあえてマイナーなロシア語をマスターしようと目論んでいた。

 

一年の留学期間に様々な出来事を体験し、少なからずその後の人生にも影響があったと思う。そのひとつがバヤンというロシア式のアコーディオンを手にしたことだった。こう書くといわゆるロシア音楽でも演奏していたみたいだけど、僕はその頃から今に至るまで残念ながら一度もいわゆるロシアの民俗音楽には興味を持ったことがない、「ロシア民謡」みたいのも。実際は現地の人が喜ぶからと数曲は練習したこともあったけれど、最初から別にロシアにハマりたくて始めたことではなく、単純に知らない楽器で好きな曲を弾いたり歌ったりが楽しかっただけだった。

 

僕はピアノが弾けない。ギターも弾けない。歌も上手いとは言えない。ドラムが多少できるということで文化祭でバンドをやったことがある程度。中学生の頃の憧れはTOTOのドラマー、ジェフ・ポーカロだった。彼が急死した1992年の夏に僕はバヤンを弾いていた。

 

ひとつロシアの影響があるとすれば、ロシア語は詩のような言語で、ロシア人は詩人のような人たちだったことだ。僕は自然とインストルメンタルではなく歌を歌うようになっていた。現地の人が喜ぶから(笑)と日本の好きな歌をロシア語に訳して歌ったりもしたが最後にはどうでもよくなって日本語で歌ってた。日本に帰ってからも僕は歌っていて、つまりはミュージシャンになっていた。かなり特異なスタイルだったと思う。なんで歌モノに行ったかというとバヤン…というかアコーディオンは左右両手を使う楽器なんだけど、右手でメロディー、左手でベースとコードを弾くという構造になっていて、持ち運びできるピアノのような楽器を目指したのだろう。だがコードのボタンは当然ながらプリセットみたいなものなので自ずと限界があるし、運指もなんだか非常にハードルが高かった(言わずもがな、アコーディオンとは指使いを目で確認しながらは弾けない楽器です)。それなら左手ではベースボタンだけ使って右手でコードやフレーズを弾いてメロディーは歌っちゃった方が初心者には敷居が低かった。自分が歌など人前で歌う柄か?という疑問を若い僕は途中から忘れたらしい。日本での音楽活動の顛末はまた後日…。

 

さていまや購入目前と勝手に思っているV-Accordionは左手キーをフリーベースモードに設定できる!つまりは全キーベース音のみにしてコードが鳴る機能はオフにできてしまうそうだ。アナログのアコーディオンで切り替えられるものがあるのかは寡聞にして知らないが、きっとその分重くなるだろうなぁと思う。デジタルである限り、この設定のお陰で重くなるということはないだろう。そして右手側。なんということでしょう。「アコーディオンの音」はもちろん、世界中の特徴的なアコーディオンの音色セットが搭載されており、さらにはストリングスにピアノやオルガン、果てはギター、さらにはサックスやフルートなど管楽器の音色も入っている。左手もウッドベースエレキベースの音色もあるという。そうだ、これはキーボードで世界的に知られるRolandの楽器なのだ。Rolandはアナログのアコーディオンを発売してはいない。発想が最初から違っている。

 

僕はピアノが弾けない。ギターも弾けない。でもバヤンが弾けた。V-Accordionではピアノとウッドベースという組み合わせで弾き語りできてしまうんだね。すごいなぁ。最後にはすごいなぁで終わってしまう。早く弾きたいな。