春日井ボンのボンかすLIFE

春日井ボンのボンかすALONE

日本人バヤニストの生活と日々

今ここ

夜、寝る直前の練習では、今ここではない場所と時間を想像して弾いてみた。

 

僕が初めて人前でバヤンを演奏したのはロシアの大学だった。もちろん僕はミュージシャンとしてではなくロシア語を学ぶ外国人としてそこにいて、1年間のコースが終了する卒業式だったのだが、そこで何曲か演奏した。なぜ演奏することになったのか、細かい部分の記憶がまったくないが自らこんなことをやりたいと話をつけてその時間を設けてもらったのだろうか?別に余興がメインのイベントではなかったのにだ。一緒に韓国人の学生(自国では国際的な企業のサラリーマンだった)がクラリネットで参加して、一緒に弾いた。へたくそなのに喝采を得てずいぶん得意げだった気がする。

 

その時の感情はともかく、その情景をイメージして練習をした。いや、練習というよりそのころの「周りのみんな」の前でいまこの曲を弾いたらどんな反応だったろうか、僕はどんな気持ちになっただろう、とか思いながら弾いた。勝手に何かこみあげてくるようなものがあって、エモーショナルな演奏になった。常にそうしてもいいが、どうもその時の情念に吸い込まれそうになって逆に失敗しそうだから、なんとなく…2割ぐらいは「今ここ」じゃないところに心を置いてバヤンを弾くのもいいのかも知れない。8割はやはり今ここにいるのだ。