それは突然だった。21時前、30分ほどバヤンを弾いた。練習を終えて耳からヘッドホンを外すと聞いたことのない音が部屋中に響いている。それはまるでどしゃぶりの中で傘をさして屋外に出た時のような音。漏水だ!スマホで連絡先を開くが手が震える。管理会社の24時間窓口に連絡。話しながら上階に行った。
普通は直接コンタクトを取るとトラブルになるので管理会社や業者を通すのだが、頭にあったのは以前も上階の過失で少々の漏水が起こったことだ。その時はコップ一杯ほどの漏水だったので拭いただけで調査も必要ないと答えた。が今回は規模が違う。あの人なら配管の故障というより気づかずに水が漏れているのでは?天井が抜けるのではないかと危惧するほどの音が、少しでも早く止めなくてはと思わせた。上階のインタホンを押すと「はい?」みたいな反応があったので「下の者ですが!水漏れとかしてないですかっ?」と叫んで、一方で電話相手とやりとりをするため部屋に戻った。警備会社と養生業者がこれから来てくれるという。トイレの漏水が最もひどくなったので、バケツを設置して受けた。とにかく写真と動画を撮りまくった。そうこうするうち、上階の住民の方(高齢者)が部屋を訪れた。「水を漏らした」とのこと。洗面台にマットで蓋をして具合悪くて横になっていたが実は蛇口が開いたままだったのを気づかなかったという。よく分からない。バケツ一杯に満たない量だという。「あぁ~よかった」「本当に具合悪くて」と繰り返していた。良かったというのは教えてくれてよかったという意味だろうが、頭にくる。よくねぇよ。僕は見てってくださいと部屋の中にその人を入れ、トイレとキッチンでまさに天井からぼたぼたと漏水する様を見せた。どういう気持ちでそんな行動に出たのかよく覚えていない。当然上階では水は止めただろうが、漏水が治まる気配はない。ひとまず過失を認めてくれたのでその人を帰した。
やがて警備会社の人が来た。待つことほんの10分ほどだったと思う。部屋の状況を見て、上階の状況を確認していった。「上の方はバケツ一杯に満たない量と言ってましたが」と振ってみると「…そんな量じゃないです。部屋中水浸しでした」と警備の方は言う。過少表現というか。やはり間に人が入った方がよいはずだ。
そうこうしていると、養生業者が二人来た。日曜の夜10時。こんな時にこうして働いている人がいる。申し訳ないものだが自分も被害者だし、なんとも言えない。天井の確認口は一か所のみでトイレの前にしかない。脚立で覗き込み、可能な限り水分を取ってくれた。写真もかなり撮っていた。これらの情報は管理会社に共有してくれる。2時間たってキッチン以外は漏水が止まった。キッチンは頻度は減ったが水滴がまだ落ちる。警備業者と養生業者が帰って一人になれたのは23時前だった。
最近たしかに変化が欲しいとは思ってたが…こんな出来事は嫌だ!だが、これからである。個人賠償保険による補償はどうなるか。闘いの始まりである。受けた被害の分だけ返してもらおう。