春日井ボンのボンかすLIFE

春日井ボンのボンかすALONE

「何のため?」とは聞かないで。

色の叫び

出かける前に鏡の前に立って、絶句した。かなりマズい姿をしている。グレーのベロアのブルゾンにグレーのベロアのトラックパンツ、グレーのリュック。ついでにグレーヘアという名の白髪頭に、グレーのマスクである。我ながらいつ職質されてもおかしくない怪しさだった。偏見に満ちた言い方をすれば、路上でリュックからいきなり包丁を出してきて暴れる男、というのがいるとすればきっとこんな格好をしているだろう──と思った。一つ一つのアイテムは服としてはブランドとしても作りとしても悪いものではない。若い人が同じ格好をしてもそうは怪しくは見えないんじゃないか。そう考えると、とても悲しくなった。

 

十年前ぐらい、前の職場の頃は、基本的にカラフルなものの組み合わせが好きだった。黄色とかピンクも好きで、そのような好みがかなり長く続いた。5年前ぐらいに一転、グレーが好きになった。これはあるあるで、カラフル期が長いほどその後のモノトーン指向の強度が高くなる。僕も例にもれず、グレー中心、最悪モノトーンの服ばかり着るようになった。グレーと言ってもマットな灰色からシルバーに近いものまでグラデーションがあるし、素材感の違いも印象を変える。自分の好みには満足していた。

 

だが鏡に映った自分はあまりにも哀しい姿だった。ダサいとかじゃなくて、そこを通り越して怪しかったのだ。首から上の問題かも知れないが、これはちょっともうやめないとダメかなと思った。まだ危機感を持ち合わせていることだけが救いだった。顔だけではなく、姿見もちゃんと見なくちゃダメだ。

 

最近、妙に鮮やかなダイヤルの腕時計が欲しくなるのは、色を欲しがる心の叫びなのかも知れない。