夜中、ふっと目が覚めた瞬間に、アレンジを思いついた。頭の中で楽器を弾くが、どうしても実際に鳴らしてみたくて寒い中にバヤン君のいるところまで歩く。灯をつければ眩しいので月明かりを助けに真っ暗なまま弾いてみる。おぉ、これだ、思った通りに繋がった。聴覚だけを研ぎ澄まし、響きを何度も確認して、今度は少し前の部分から弾いてみる。起きてみてよかった。これで曲が少しだけよくなった。暗闇の中で、音の美しさというものにただただ感謝して心が温かくなる。こういうのが作曲の愉悦であり醍醐味だ。こうした瞬間がないと僕の人生は随分とつまらなくなるだろう。
