春日井ボンのボンかすLIFE

春日井ボンのボンかすALONE

くだらんこだわり

ささやかなストーリー

今日は武器のような雪が降った。小さな槍のような雪が。

楽器の進化について話そう。この感動をどう表現しようか…。

 

アコーディオンの革命。

 

まず大まかに言ってアコーディオンには鍵盤式とボタン式がある。ボタン式にはさらにクロマティック(押引同音)とダイアトニック(押引異音)の違いがあるのだが、その説明はまた後日にするとして。鍵盤とボタン式は、銃で言えばリボルバーとオートマティックくらい見た目も構造も違う。でも目的は同じだ。さて、鍵盤式アコーディオンのつくりは世界中どこでも同じだけど、主にヨーロッパ各国でそれぞれ独自の進化を遂げたボタン式には、ある音のボタン位置が異なるのだ。例えばCからC#に移動するボタンの位置が右下だったり左下だったりで異なる。こうして同じボタンアコーディオンと言っても幾つかのボタン配列が出来た。つまり、運指が違うという訳。

 

僕が演奏できるのはB配列のバヤンというロシアのアコーディオン。そうすると、フランス製やイタリア製のアコーディオンの音に惚れても、買ったところでバヤンの運指では演奏できない、ボタン配列が異なるから。ボタンアコーディオンを買おうとしたらまず配列が重大な訳です。まさに国や文化の壁があるイメージ。

 

ところがです!RolandV-Accordionでは世界の主要なボタンアコーディオンの配列をデジタルの設定で選択できるんです。これがどんなにすごいことか。文化の壁を越え、一つの楽器で世界中のボタン式(クロマティック)アコーディオン奏者が演奏できる。それを日本のメーカーが開発したというところが日本人として何とも誇り高い。これはドラえもんの「ほんやくこんにゃく」ですよ!「ほんやくこんにゃく」を知らない人はいないだろうけど、簡単に説明すると、これを食べるとあらゆる言語を母語として扱えるという秘密道具。それこそまさにV-Accordionそのものだ。世界中のボタンアコーディオン奏者以外にはどうでもいい話なのだろうけど、ネットで見つけた時にちゃんと設定の一つに「B-griff bayan」があることを知り、僕は「えぇぇぇぇえ!」と絶叫した。なお配列を設定から選んで、ピアノの白鍵黒鍵にあたるボタンの色は、ねじのように外して付け替えられる。なんと理に適っているのだろう。

 

YouTubeV-Accordionを弾いている人を見ると、結構な割でロシア人も出てくる。まさにバヤン奏者垂涎の的である。バヤン弾きである限りロシア製バヤンしか選べない(当然だが)という制限をV-Accordionは取っ払ってしまった。

 

いまさらだけどRolandV-Accordionは電子楽器です。つまり音源を鳴らして音を発生させる。現行モデルはスピーカー内臓で、ACアダプタもしくは単3電池8個(かわいい笑)で外部に音を出して演奏できるほか、出力端子があるのでライブの際はアンプから音が出せるという。そしてそして…ヘッドフォン端子があるので夜中に練習も可能!あぁたまらない。この革命児がうちにも欲しい!いろんな偶然が重なり、なんとなくまたバヤン弾こうかなと軽く考えていたのが、いまや具体的に出費の算段をするようになったのも致し方ないところだ。

 

と、こういう話を連れにしたのだが反応はイマイチ。訳を聞くと「アコーディオンなら生楽器のほうがいいような気がするんだけど、その電子なんとかがそんなにいいものなの?」ということだった。…うん、分かるよ。電子楽器ってそう思われるんだよね。そうだなぁ、例えばウクレレ。「俺はエレキウクレレにこだわってます!」と言われても「普通のウクレレでいいのに?」と思っちゃう人はいるかも知れない(エレキウクレレは実際に存在します。奏者の方すみません、あくまで例えです)。

 

でも、楽器の選択は大事で、それは言い換えると必要性なのだ。生があるのに電子楽器をあえて選ぶのは必要とするその背景があるということ。もちろん、生楽器を選ぶのも一つの選択だ。僕は電子楽器であるV-Accordionを必要としている。練習場所の確保、重い筐体、(ロシアらしい)無骨すぎる見た目…徐々に楽器から離れていった理由を、V-Accordionはすべて軽やかに否定する。100年変わらない生もいい。だが僕がバヤンを弾かなかった20年のうちに実現した進化が昔のミュージシャンを呼び寄せてくれた。そう、日本の技術力のおかげで!このストーリーを僕はすっかり気に入ってしまった。きっと世界中(のごく一部)で同じストーリーを感じた元奏者もいるはず。そこに僕のささやかなストーリーもひっそりと合流していくのです。