ある昭和のアニメソングで…曲の一部にとても印象的な下降スケールがある。これをピアノで弾くとなんでこんなスケールが思いつくのかと不思議なんだけど、バヤンで弾いてみたらある一定の方向に指を動かすと弾けることに気づいた。まるでバヤンで作ったみたいに、というかピアノの鍵盤が理解を難しくさせているだけだった。こういうことがたまにある。きっとそれはある調性に従った音階なのだろう。それがたまたまバヤンだと楽に弾ける構造だったというだけだ。そういうことに気づくと、楽器の違いって面白いなと思う。
いまやシンプルな音楽がとても好きだ。単純な音楽という意味ではなく、構成がシンプルなのに深みを感じさせる音楽。晩年の教授のピアノソロは特に好きだ。もちろん様々な楽器のトリオやカルテット、様々な形態のバンド、打ち込み、オーケストラ…それぞれに魅力的だけど、常にそうした厚い音じゃないと満足できないということがない。むしろそれはたまに聴くぐらいでいい。そうした音楽は世に沢山あふれているから。
僕は自分がやっていることがたまらなく好きだ。楽器一つでオリジナルの器楽曲を弾くというのは、アカペラで歌うぐらいシンプルな音楽的行動だろう。本当にもうこれ以上いらない。これができれば、これを続けることが許されるならそれでいい。音楽を続けている限り、僕は自分のことを嫌いにならないで済む。