春日井ボンのボンかすLIFE

春日井ボンのボンかすALONE

日本人バヤニストの生活と日々

変な曲の居場所 (2)

さて、その新しい4拍子のフレーズは、これが交響曲なら主題の前に展開される、盛り上げていくパートで使えるんじゃないかという感じだった。あまり僕が作らない、リズム重視なフレーズ。ん~これは!…そのフレーズの声が聞こえる。全力で、居場所が欲しいと叫んでいる。

 

そうなのだ。これは変な曲だ。絶対に売れない。誰の得にもならない。僕が気に入らなければすぐにでもこの世から消えるだろう。だからそのフレーズはなんとかしてくれと大声で叫んでいた。自分の作ったフレーズの声が聞こえるという、人に言ったら心配されそうな初めての体験なのでした。

 

どうしたもんかと思っていたら、その前にもともと浮かんだフレーズを忘れてしまった。最初の音は覚えているが、リズムが分からない。リズムがメロディーみたいなフレーズだったから、リズムを忘れたらもうどうにも覚えていない。どうやら二つは似ているが違っているので、二つ目のフレーズが浮かんできたことで最初のが上書きされてしまったようだった。可哀そうな兄弟よ。兄は姿を消して忘れられ、弟は消え入るまいと絶叫していた。

 

ひとまず「弟」フレーズをただただ弾いていた。これは採用されないな、という自信があった。割と早いフレージングを機械的に演奏するような感じで、僕にとっては苦手だから。しかし難度が絶妙というか、絶対無理なレベルじゃなく、ある程度やれば指が勝手に動くような不思議な魅力があった。次こそ弾けそう、みたいな感じで繰り返しやっているうちに少し没入する感覚になり、8小節を繰り返し、5分以上ずっと弾いていた。

 

そんな時に「兄」フレーズをふと思い出した。「ふと」、なのに完全に顔を覚えていた。リズム感もテンポも完全に「弟」と同じだった。2つのフレーズは紛うことなき「兄弟」だったのだ。…実は調は半音異なっていたが、それを合わせたらベース音というか根音の流れまで一致した。そして兄弟は一つの長い展開になった。まだ曲とは言えないが、シーンがシークエンスになったようなもの。兄の後についていく弟は不思議と、一人でいる時より違和感がない。自然な流れでつながっているからか。僕が「変な曲」だと思ったフレーズの居場所は、その直前に出来たフレーズの後だったのだ。

 

変な曲…分かりづらい曲というのは、ちゃんと作ってやるべきか悩む。完全に作ってからボツになることも多い。作っている最中は集中し熱中するが、冷静になると魅力を感じなくなって、捨てる。そういうのは僕程度でも無数にある。けどこれだけ創作物そのものがアピールしてくるような体験はなかったので、今回は特別なのかな?もうちょっと練ってみようか。